人は誰しも「癖」を持っています。
緊張した時に頭をかく、ストレスを感じた時に爪をかむ、ちょっと食べ過ぎてしまう…。
もちろんこういった癖は大なり小なり皆が持っており、ほとんどが正常の範囲内です。
しかし時にそういった行為が常軌を逸してしまい、歯止めが利かなくなってしまう場合があります。
「抜毛症」もそういった精神疾患の一つで、自分で自分の髪の毛を抜いてしまい、本人がどんなに止めたいと思っても止められず、頭皮の一部に髪の毛がなくなるほどになってしまう状態を言います。
抜毛症の症状
抜毛症は別名トリコチロマニア(Trichotillomania)といいます。
過去稀な症状と思われていた時期もあるようですが、現在では人口の0.6~3.4%程度と意外に多い疾患であることがわかっています。
また
- 本人が両親の第一子であることが多い
- 発祥する割合は女性9割
- 20代までの若い年代に始まることが多い
- 心理的ショックやストレスが強くかかっていることが多い
という傾向があることがわかっています。
神経細胞と脳のコミュニケーションの一部に支障があるために起こるという説もありますが現段階では推測に過ぎず、はっきりとした原因はわかっていません。
抜毛行為自体は学童期の癖としてはかなり多いため、たまに少しだけ抜いてしまうという程度ならばあまり重く受け止める必要はありません。
軽い症状の場合は、自覚するだけで止まる場合もあり、精神的な障害が解消することで発症しなくなることもあります。
やめたいのにやめられない抜毛症
抜毛症は症状が重くなると、本人が止めたいと思ってもなかなか止めることができません。
なぜならば往々にして髪の毛を抜くという行為が気持ちを楽にする手段となっており脳内環境が正常でなくなっているケースもあるからです。
本来は周りにいる家族や友人が脱毛行為を怒ったり批判したりせず、原因となるストレスを良く聞いて受け止めることが大事です。
しかしなかなか理解されにくい症状であること、脱毛行為をしている本人自身がその行為を恥ずかしいと思ったり罪悪感を感じていることも多いため、手に負えない場合は精神科などでの治療が必要になります。
症状がエスカレートすると本人は隠したくても目に見えて毛髪が減り、見た目にも明らかとなってきてしまいます。
また健康な髪の毛を無理に抜く行為は頭皮を長期に渡って痛めつけることになり、毛髪が二度と生えなくなってくる危険性をはらんでいます。
たまに数本の髪の毛を抜く程度であれば問題はありませんが、数十分に渡り抜き続けてしまうなどの行動がある方は「抜毛症」という症例があるということを知っておいてください。
抜毛症に限らず、一般に心の病気はできるだけ早期に治療を開始することで解決への時間も本人への負担も少なくなります。